◆ノーベル賞の本庶氏、22億円申告漏れ 特許対価めぐり

朝日新聞のこのタイトルはインパクト強めですね。ノーベル賞のあの本庶さんが?
一体なにをしでかしたのやらと内容を見ると、タイトルとのギャップがまぁ。。
金にガメつい狂気のマッドサイエンティストにでも仕立てあげたいのか、と悪意すら感じました。
鳳凰院もびっくりです。

申告漏れの内容は至ってシンプルで、本庶氏と製薬会社・小野薬品工業との間で特許の使用許諾契約を結んだものの、使用対価が低すぎて本庶氏が受領を拒否、仕方なく小野薬品は法務局へ供託。その額22億円。
額のインパクトがでかいですが、不動産賃貸業の論点で、消費税受験時代に腐るほどやった「供託は課税」の条件反射で、課税対象取引・収益計上というのはすぐに浮かびますが、本庶さんほどの影響力の大きい方がそこをきちっとできていなかったのは、たしかにちょっと残念です。
いかにノーベル賞受賞者であろうと、条文を覆す通達も宥恕規定もないので、そこはしょうがないと思いますが、内容が内容なだけに、ミスリードにつながるような記事の書きぶりは気の毒だと思います。
重加算税もついてないようなので、ドバイを熱く語ってた徳井さんとかとは大違いです。

 

 

 

 

 

◆納税資金の原資はどこから捻出?
過少申告加算税等を含めた追徴課税額は7億円、と報じられてますが、自分の懐にキャッシュが入ってきてないのに、どうやって納税するのかも気になる点です。
「応益負担」「応能負担」という考え方がありますが、たしかに確定債権ということでは応能負担となります。
ただ、税金は原則金銭一時納付です。
あくまで推測ですが、生活に支障をきたさない程度の分納、あるいは供託金からの充当と考えられます。
もちろん一撃で払えればそれまでです。

 

◆小野薬品が払った供託金は経費?

直感的に、相手側が課税・収益計上なのだから支払った側は当然経費計上、と考えられますが、本当にその安易な考え方で合ってるかを考えるのも、妙味あるというか税法の奥深いところだと思います。

例えば、不動産賃貸借に係る礼金について、受け取った側は返還不要で確定した収益として、契約締結日に全額収益計上されます。敷金でも、返還されない部分というのは同じ考え方で、収益計上です。
ただ、礼金を支払った側というのは、一発で経費計上できません(20万円未満であれば〇)
繰延資産として一定の期間で経費化されることになります。
つまり収益と費用のタイミングにズレが生じます。

私見ですが、もちろん期間対応っていうのもあると思うんですけど、この収益早く、費用遅くという考え方は、単に徴税力の向上が目的なんじゃと思ってます。
取れるときにさっさと取ってしまう、っていう。
源泉税なんかはまさにそうですね。

 

本題の小野薬品が払った供託金について。
経費と損金は厳密には異なりますが、ここでは割愛で、結論としては全額損金計上されていると考えられますが、あえてその根拠を考えてみます。

法人の損金とは、売上原価・販管費・損失の3パターンしかないわけですが、この供託金は「販管費」に該当すると。
販管費で損金となるには、「債務確定基準」というこれまた3要件があります。その要件は、

①債務が成立しているか
⇒特許の使用許諾契約ということで双方が合意していると思いますので、〇

②具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しているか
⇒ここが一番分かりにくいですが、その特許を使用したことによってオプジーボの開発、販売までこぎつけたはずなので〇

③金額を合理的に算定
⇒両者間で揉めてますが、小野薬品が正当な対価として設定した金額と思われるので〇

この3要件を満たしているため、債務が確定してる=販管費として損金計上という結論です。
逆に要件を一つでも満たさなければ、債務が確定していないものとして否認されます。
全容がはっきり分かっているわけではないので、もしかすると②や③を満たしていないのかもしれませんが、小野薬品のBS、PLがどうなってるのか気になるところです。

これとは別に、特許を使用するために契約一時金としての支払いがあった場合、これは繰延資産又は無形固定資産として資産計上され、期間償却という考え方になります。

 

22億円が妥当かどうかは分かりませんが、フェロー田中さんってすごいなって思いました。
研究に見合う相当な対価、難しいですね。

 

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