◆時価7000万円の土地を1億8000万円で購入、何が問題か

判例って見てると面白かったり、興味深かったりするものが多くあるんですけど、法人税の受験をしていた際、あーこれ理論とかで腐るほどやった問題だわ。というのをつい最近目にし、思わず考えさせられました。

 

原告A社は不動産業を営む法人で、得意先B社に対し、1億8000万円の債権を有していました(B社からすると債務)
債務超過状態の続くB社に対し、債権回収に苦慮したA社は、B社が有していた時価7000万円相当の土地と、この1億8000万円の債権を対当額で相殺する合意を行うことで、お互いの債権債務を消滅させました。
お金が返せず、土地で代物弁済してチャラにした感じですね。

 

その後A社は、この土地を5000万円で売却(益金算入)購入価額1億8,000万円を、棚卸資産である土地の売却に係る「売上原価」として損金算入しました(翌期へ繰り越す欠損金2億2,000万円)。これに対し国側は、購入価額1億8,000万円と時価7,000万円の差額1億1,000万円は「売上原価」として損金算入できないことを前提に更正処分等(翌期へ繰り越す欠損金1億1,000万円)を行ったことで争いとなりました。
争点は、購入価額1億8,000万円と時価7,000万円の差額1億1,000万円を「売上原価」として損金算入できるか否かです。

 

いかにも法人税の本試験で出そうな問題ですね。結論、理由、根拠法令べた書き。。なんか懐かしいです。
あくまで2019年10月18日の東京地裁判決ベースですが、損金の額に算入できないという判断となりました。
ポイントは、時価と対価の差額が「寄附金」に該当するかどうかです。

 

 

 

◆実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額とは

法人が行う資産の譲渡は、時価に比して対価が低い場合、その差額のうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」は、売主から買主に対し「寄附」があったと見られるときがあります。個人の場合は「贈与」です。
低額譲渡はなんとなくイメージがつきやすいですが、今回のケースのように時価より高額に購入した場合も、同じように「寄附金」の考え方が出てきます。この場合は買主から売主、A社からB社に「寄附」があったと認定したと。

法人の場合、寄附金はほぼ損金算入されないので、A社は全面的に敗けた形になったかと思いますが、今後A社が控訴するようであれば、結論が180度変わる可能性もゼロではないと思います。なぜなら、B社は債務超過状態が続いているとあるからです。

どの程度の債務超過なのかまで分からないので、一概には言えませんが、B社の債権回収が滞っていて、苦肉の策として今回のような譲渡が行われたのだとしたら、果たしてそれは贈与又は無償の供与なんですかね。ここでは出てきませんが、もちろん貸倒れの論点も残されていると思うし、場合によっては交際費ということもありえるかもしれません。しかし交際費でも損金不算入ですが。

たぶんこの手の時価と対価の差額問題が出されたとき、真っ先に「寄附金」「交際費」たまに「広告宣伝費」という結論が出るように擦り込まれたので、あーやっぱりかという印象を最初に受けましたが、そもそもこれは寄附行為なんかという疑問が湧きました。
基本的に寄附金は見返りを求めない、反対給付がない行為を指すので、条文にある「実質的に」とかいう言葉がなんとも曖昧なんですよね。個々人の主観も入るし。まーしかしそこが税法の難しさであり面白さでもあります。

全くの余談ですが、試験でこの問題が出たら根拠として寄附金、交際費のべた書きをしつつ結論として損金の額に算入されない。と論述すれば高得点取れるんでしょう。国側の考えだし。
ただ損金の額に算入される、と真逆の結論を書いたとしても、法22条、売上原価、棚卸資産、貸倒れの論点を押さえていれば、満点とは言わずともいくらかは得点取れる気がします。掃除しよ

 

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