◆修繕費と資本的支出の境目
この報道のされ方はさすがに気の毒ですね。マスコミによって表現の仕方が若干違うようですが、見る人からすると何か悪質なことをやらかしたんだろう、と思ってしまいます。
・クボタが所得隠し2.4億円 道路補修費、国税指摘【朝日新聞】
・クボタ、10億円申告漏れ 2.4億所得隠し認定【産経ニュース】
・クボタ:所得隠し2億4000万円【毎日新聞】
調査の内容が字面でしか伺えないので、明らかに見解の相違!と断定は出来兼ねますが、どの記事を見ても重加算税のペナルティを食らうようなものとは思えないです。
重加算税(以下「重加」)とは、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したことによる一番重いペナルティで、二重帳簿や帳簿、証憑書類の破棄、改ざん、隠匿などによる隠ぺい仮装行為、もっと端的に言うと意図的な収入除外、架空経費の計上などが該当します。
今回のケースでは、2.4億が重加対象の所得隠し、7.9億が単なる経理ミスと報じられていますが、どうも2.4億のところがしっくりきません。
産経ニュースによると、
本来は資産として計上すべき費用を修繕費として経費計上していたとして、工事を複数箇所の補修と見せかけて経費計上し所得を圧縮しようとした、と指摘。(産経ニュースより引用)
とあります。
これが個人の通帳(簿外資産)に売上金を入金し、収入を除外していたS氏や、多額のキックバックによる架空経費を計上していたU氏と同列とは到底思えません。実際にこの工事はやっているわけですからね。
問題は、「このまま正規に請求書をあげられると、固定資産に計上しなきゃだな・・・耐用年数も長いし、償却が終わるまで時間が掛かる・・・そうだ!下請けに頼んで見積書を細かく分断してもらおう!部分的な補修ということにすれば、修繕費として一時の経費にできるだろう」的な感じで、施工業者と通謀し、意図的に税額を減らそうと画策していたらたしかに重加対象となってもおかしくないと思います。もちろんここまで裏を取ってれば。
とは言え!一時の経費にできなくても、時間は掛かりますが減価償却費としてちゃんと経費にはなるわけです。単純な例ですが、どちらも投下分の資金は全額経費となります(アスファルト、耐用年数10年の定額法とする)
1年目 | ・・・ | 10年目 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
修繕費 | 2.4億 | 0 | 0 | 2.4億 |
固定資産 | 2.4千万 | 2.4千万/年 | 2.4千万 | 2.4億 |
これが果たして重加なんですかねぇ。7.9億の経理ミスと同じく、間違えて修繕費にしてしまいました、というパターンであれば、過少申告加算税で済むと思います。もっと言うと、固定資産としての価値や耐久性を増大させたり、耐用年数の増加につながったりする資本的支出に該当せず、通常の損耗による原状回復や維持管理のためのもの、ということであれば否認されることもなく、やはり修繕費として認容されるはずです。まー真相はどうあれ、悪質と認定されたのでしょう。重加を取りたいという国税当局の思惑もあるのかもしれません。
個人的には、所得隠し、ともすれば脱税とも取られかねない報道によってレッテルを貼られ、クボタのブランドイメージが崩れないのか気になります。
本当は小見出しの修繕費か資本的支出か、という点で進めようと思ってたのですが、長くなるのでまたの機会にします。
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