◆億り人の利益は半分以上が税金

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
先月12月1日、国税庁より「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」ということで、FAQが公表されました。
個人的にどうしても引っかかる点があるものも含め、いくつか挙げていきたいと思います。

それにしても仮想通貨の勢いはとてつもないですね。代表的な通貨としてビットコインがあまりにも有名ですが、ビットコインの価格推移だけを見ても、ちょうど一年前1BTCあたり11万円ほどだったものが、今では1BTC=約195万円(H30.1.8現在)と20倍近い価格を付けています。もっと言うと、ビットコイン創生期(H22.7あたり。このときにビットコイン取引所Mt.Goxがサービスを開始。※1BTC=約7円からのスタート)に1万円分のBTCを保有していれば、現在の価値では27億8460万円というそれはもう天文学的な。恐ろしいことになっていたのです。
さすがにそこまで派手な方はなかなかいないと思いますが、仮想通貨によって億り人(利益が1億円を超える人)が大量に現れたのではないでしょうか。何ともうらやましい話しです。
こうなると、利益に係る所得税は最高税率である45%、住民税が10%で、実に55%(控除額があるから実効税率はもう少し低い)の税金を納めなければならないことになります。ここが雑所得のこわいところです。株のように申告分離課税であれば20%で済むのに。嫌になっちゃいますね。

とは言うもののここ最近は過熱感があるのか、その値動きも僅か1か月で1BTC=135万~235万と激しい乱高下を繰り返しており、新規参入者にとってはなんとも荷が重い状況となっています。

 

 

 

◆金銭納付という違和感

本題行きます。
今回国税庁から公表されたものは、確定申告の対象となる仮想通貨の損益やその具体的な計算方法等について取りまとめたものです。
利益出たら申告・納税しなさいよ、国は見てますよ、とでも言いたげな感じです。

1 仮想通貨の売却


保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した際の所得の計算方法を教えてください。

(例) 3月9日 2,000,000円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。

5月20日 0.2ビットコイン(支払手数料を含む。)を110,000円で売却した。


保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合,その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

上記(例)の場合の所得金額は,次の計算式のとおり,10,000円です。

110,000円 -  (2,000,000円÷4BTC)   ×   0.2BTC   = 10,000円

【売却価額】【1ビットコイン当たりの取得価額】【支払ビットコイン】 【所得金額】

2 仮想通貨での商品の購入


商品を購入する際に,保有する仮想通貨で決済した場合の所得の計算の方法を教えてください。

(例) 3月9日 2,000,000円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。

9月28日 155,000円の商品購入に0.3ビットコイン(支払手数料を含む。)を支払った。


保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合,その使用時点での商品価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

上記(例)の場合の所得金額は,次の計算式のとおり,5,000円です。

155,000円 -  (2,000,000円÷4BTC)   ×   0.3BTC   = 5,000円

【商品価額】【1ビットコイン当たりの取得価額】【支払ビットコイン】 【所得金額】

※ 上記の商品価額とは,日本円で支払う場合の支払額の総額(消費税込み)をいいます。

3 仮想通貨と仮想通貨の交換


保有する仮想通貨を使用して他の仮想通貨を購入する場合(仮想通貨と仮想通貨の交換を行った場合)の所得の計算方法を教えてください。

(例)  3月9日 2,000,000円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。11月2日 他の仮想通貨購入(決済時点における他の仮想通貨の時価600,000円)の決済に1ビットコイン(支払手数料を含む。)を使用した。


保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合,その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が,所得金額となります。

上記(例)の場合の所得金額は,次の計算式のとおり,100,000円です。

    600,000円     -  (2,000,000円÷4BTC)  ×  1BTC  = 100,000円

【他の仮想通貨の時価(購入価額)】【1ビットコイン当たりの取得価額】【支払ビットコイン】 【所得金額】

※ 上記の購入価額とは,他の仮想通貨を購入する際に支払う仮想通貨の総額を日本円に換算した金額をいいます。

4 仮想通貨の取得価額


仮想通貨を追加で購入しましたが,取得価額はどのように計算すればよいですか。

総平均法と移動平均法。長いから省略。

5 仮想通貨の分裂(分岐)


仮想通貨の分裂(分岐)に伴い,新たに誕生した仮想通貨を取得しましたが,この取得により,確定申告の対象となる所得は生じますか。


所得税法上,経済的価値のあるものを取得した場合には,その取得時点における時価を基にして所得金額を計算します。

しかしながら,ご質問の仮想通貨の分裂(分岐)に伴い取得した新たな仮想通貨については,分裂(分岐)時点において取引相場が存しておらず,同時点においては価値を有していなかったと考えられます。

したがって,その取得時点では所得が生じず,その新たな仮想通貨を売却又は使用した時点において所得が生じることとなります。

なお,その場合の取得価額は0円となります。

6 仮想通貨に関する所得の所得区分

 

雑所得か事業所得。長いから省略。

 

7 損失の取扱い


仮想通貨の取引により,雑所得の金額に損失が生じました。この損失は,給与所得等の他の所得と通算することができますか。


雑所得の金額の計算上生じた損失については,雑所得以外の他の所得と通算することはできません。

所得税法上,他の所得と通算できる所得は,不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得とされています。雑所得については,これらの所得に該当しませんので,その所得の金額の計算上生じた損失がある場合であっても,他の所得と通算することはできません。

8 仮想通貨の証拠金取引

 

⇒省略。

 

9 仮想通貨のマイニング等

 

⇒省略。

【国税庁 個人課税課】FAQより引用

問4~9も大事な論点ですが、詳細は省略します。
まずは問1、これはシンプルで分かりやすい例です。BTCで利益が出た、換金した、それについての所得はこれ。申告の際は、例題のような計算明細をつけるとより分かりやすいと思います。

 

 

最も引っかかるのが問2です。仮想通貨はそもそも投資目的ではなく、資金決済方法としての使用が本来の趣旨のはずです。現にビックカメラやHISの決済サービス開始など、日常生活で使用できる機会も増えてきています。その経済的価値や、モノという物理的価値の上昇に課税を行うのは分からなくもない理論ですが、肝心の納税は、現行法では原則金銭納付となっています。家電や旅費でBTCを使用した、それによって問2で言うような利益が出た、税金は現金で払います。んー何ともしっくりこないです。

 

例えばこれが不動産の取得だったらどうでしょう。1BTC=200万円で取得、その後価値が急激に上がり、1億円の不動産を1BTCで購入できたとしたら、単純にその利益は9800万円になります。その半分以上の税金を、現金で払えるとは到底思えません。不動産に投下してしまったら、確実に担税力はないですよね。延納?物納?国との共有?それとも納税用のキャッシュを別にプールしておけとでも言うのでしょうか。
これは問3の交換に係る課税も同様で、納税方法も再考しなきゃダメなのではと思います。

 

考えられるのは、仮想通貨での納税です。特に問3なんかは、仮想通貨納税が可能であれば間違いなく担税力はあるはずです。しかしこれにも問題があって、納税に仮想通貨を使用したら、その納税額に応じた価値の上昇分が発生、そこにまた納税額が発生し。。という無限ループに陥るという。こうなってくるとプチパニックです。同じような疑問を持たれている方はいると思うのですが、まーしかし現状は何度も言うように金銭納付なのであります。

 

 

仮想通貨の取り扱いに関しては、今後どんどん当局のマークが厳しくなっていくものと予想します。かつてのFXや金地金がそうだったように、出始めのころはそれこそやりたい放題隠し放題だったものが、今ではその利益はすべて筒抜けと考えた方がいいと思われます。マイナンバーの付与や支払調書の義務化など取引所に課していくかもしれないし、あの手この手で所得の捕捉を行うんじゃないでしょうか。

年始一発目のニュースで、国税当局が多額の利益を得ている投資家のピックアップを始める、との報道も出ています。ブラフかもしれないですが、億り人はその利益を把握されてると考えた方がいいかもしれません。
※含み益には課税されません

 

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