◆世界中の政治家や富裕層が戦々恐々?

最近話題の「パナマ文書」について、今回はお届けしたいと思います。連日ベッキーか、舛添さんか、パナマかぐらいの勢いでメディアを賑わせていますが、果たしてパナマ文書の何が問題になっているのでしょうか。

パナマ共和国とは、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸との境界に位置する共和制国家であり~とかの説明はこれぐらいにしておいて、だいたいここら辺の国です。ズレータの出身地です。パナマウンガッ!!

 

パナマ

 

このパナマがいわゆる「タックスヘイブン」に該当し、諸外国富裕層の租税回避の温床と化しております。ヘイブンと言うぐらいなのでなんか楽しそうな感じがしますが、全然天国と関係ないです。よく「租税回避地」という呼び方をし、元々当局が目を光らせていた問題でしたが、この告発によってさらに注目を浴びることになりました。

 

日本の税制では、外国子会社合算税制という法律が存在し、通称タックスヘイブン税制と呼ばれています。細かい要件等を挙げると長くなってしまうのですが、概要は
①内国法人などに発行済株式等の50%超を保有されている外国法人(外国関係会社)のうち、
②日本の実効税率に比べて税率の低い(所得の20%以下)、又は税が存在しない軽課税国に該当するもの(特定外国子会社等)は、
③その国での実体など(事業・実体・管理支配・非関連者基準)がない場合、
④その内国法人の保有株式割合(10%未満は適用除外)に応じた一定の金額を収益とみなし、
⑤その内国法人の益金の額に算入する

 

というものです。つまり軽課税国でのペーパーカンパニーの収益は、日本にある親法人の収益と合算しろというのです。ペーパーがどうやって収益をあげるのかと言うと、広く行われているのがファンドです。タックスヘイブンでファンド会社を設立し、運用によって収益をあげますが、その収益には税金がかからず、どんどん利益が留保されていく図式です。そして、頭のいい富裕層の人々はこの合算制度に該当しないよう巧みにすり抜けていたんだと思われますが、ここで想定外の事態が起きます。それが「パナマ文書」と言うわけです。この人たち、資産隠してますよ!的な告発であります。

 

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◆脱税≠租税回避が意味するもの

やれ儲けているくせに!やれ守銭奴(これは舛添さんも)が!とまるで犯罪者のような報道が目につきますが、あくまで「租税回避」の範疇にあることを忘れてはいけないんじゃないかと思います。堀江さんが「パナマ文書のどこにニュースバリューがあるのかさっぱりわからん。普通に個人として無駄な税金納めないのって普通じゃね?(原文ママ)」とつぶやいて炎上したようですが、言い方はどうあれ大筋は賛同します。架空人件費や売上除外といった「脱税」とは全く異なるからです。

 

こう言うと某コメンテーターの意見として、合法であれば何をやってもいいのか!真面目にやってる納税者にとって大迷惑だ!不公平だ!ヤンヤヤンヤ!という声が上がってますが、こういったのはそもそも論点がずれていると思います。そうじゃなくて、なぜそれだけ儲けているのにそんなに納税額が少なくなるのか、そこに問題があるならばなぜ改正が入らないのかを考えるべきです。

 

身近な例でいうと、かの有名なソフトバンクは当期純利益が約788億円ながら、国に納める法人税額はわずか500万円で、その実効税率は約0.006%と言われています。なんでこんなことが起きるのでしょう?メディアの報道(というかこれは某書籍)はこれだけで終わるので、真面目な納税者は、けしからん!不快だ!となるわけです。

深層心理を煽る方が売れるのかもしれませんが、正しい情報を与えられなければ混乱を招くだけです。ちなみにこのカラクリは、子会社からの受取配当金の益金不算入が大いに関係していると言われています。税務と会計の本質が違うということがよく分かる例です。

 

なので、パナマ文書=悪と決めつけるのは早計で、もっと本質を見極めなければいけないというのが自分の意見です。たしかにマネーロンダリングや不正蓄財のプールとなっているのかもしれませんが、適切に申告納税を行っている人も少なからずいると思います。伊藤忠や丸紅、ソフトバンクといった日本のトップ企業の名前も挙がっているようですが、合算制度に基づいて適正に納税しているのであればなんら問題はないはずです。ただ、たまたま孫の孫会社が出資していたとか、租税回避目的ではないといった釈明では、限りなくクロに近いようにも感じますが。今後もこの問題は、興味深く追っていきたいと思います。

 

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