◆加熱する「特産品」の応酬

メディアでもよく報道されていることもあり、格段に浸透率が高まったふるさと納税。今や「ふるさと納税」とググると真っ先に「ランキング」が予測変換され、その返礼品への関心の高さが伺えます。
平成27年4月1日以降の寄付については、確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」の選択が可能となったほか、単純に限度額(よく言う実質2000円負担の限度)が2倍になったこともあり、より注目度が高まりました。

 

 

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そんな中、各自治体はあれやこれやと目玉の特産品を打ち出し、寄付を募ろうとする動きが活発になりましたが、このほど総務省より過度な返礼品に対する警鐘が鳴らされました。
内容は、金銭に類似するものや資産価値のあるものとして10品目余りを列挙し、寄付金制度にふさわしくないものとして返礼品にすることを控えよ、というものです。具体的には、プリペイドカード、電子マネー、通信料金、家電、パソコン等の電子機器、貴金属、ゴルフ用品、自転車などです。こういった通知は今に始まったことではなく、制度が浸透されるにつれて土地や買い物に使えるポイントなど、換金性の高いものを返礼品にする自治体が現れたことを受け、これまでも複数回にわたって自粛を求めていました。

 

 

ただし、この通知はあくまで要請であり、強制ではありません。姫路市はゴルフクラブを返礼品として贈っていますが、この取りやめは行わない方針です。豪華な返礼品が寄付者を集めてきたのは事実であり、姫路市のように当面は継続する自治体が多いようです。地元に生産工場を持つ家電やパソコンを送る自治体は多くあり、「同じ地元産業で、農作物はオッケーで電化製品はダメなのはおかしい」と言う意見もあります。

しかしこの意見はどうでしょう。転売などが横行していることもあり、より換金性の高いのは電化製品です。農作物は寄付者に費消されることが高い確率で想定され、その特産品をもって各自治体への認識度や関心が高まり、地方創生の足がかりとなるはずです。従って、よりこのふるさと納税の趣旨に合うのはやはり農作物や海産物などの食品関係なんじゃないかと思います。もちろん、何も食品だけに限定という意見ではありません。例えば、新潟県燕市ではスプーンやフォークなどの金属洋食器が有名ですが、高い技術力で作られる爪切りなんかも、同市が誇る特産品であることは間違いありません。この点で政府の見解と一致しますが、その自治体の魅力を存分に伝えることができる返礼品を贈るべきと考えます。

 

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◆持つ地方、持たざる地方の格差拡大

先ほど農作物や海産物がふるさと納税の趣旨に合うと書きましたが、これは返礼品として適正なものであって、そもそもの趣旨は自分の生まれ故郷や地域、これから応援したい地域の力になりたいという思いを実現し、「ふるさと」へ貢献するための制度と総務省は謳っています。本来の趣旨を逸脱した「お礼合戦」が過熱すれば、当然特産品を持つ地方と持たない地方との格差は拡がるばかりで、安倍総理の掲げる地方創生が本末転倒に終わる可能性もあり得ます。
一口で二度おいしい、得しかしないこの制度ですが、返礼品ありきではなく、純粋に応援したい地域に対して寄付の気持ちを持って行うのも、満足感は十分に得られるのかもしれません。自己満だっていいじゃない。

ちなみにふるさと納税による返礼品は一時所得に該当するため、年間50万円相当を超えると確定申告を行ってその分の所得を納税しなきゃダメです。ただこの申告、やってる人いるんですかね。。今のところ聞いたことないです。

 

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*アイキャッチ画像著作者:Free Download Web