◆連年贈与認定は時代錯誤で、もはや都市伝説

上記は昨年参加した某セミナーの講師の先生が仰っていた言葉です。たぶん違うと思うんですけど、なんとなくこんなニュアンスのことを仰っていたような記憶があります。。このときはあーそうなんだ程度に思っていたのですが、このほど国税庁より、興味深い照会事例がでたのでご紹介します。

 

照会内容は、三井住友信託銀行の「暦年贈与サポート信託」による贈与について、相続税法24条の「定期金給付契約に関する権利」の贈与にあたるかどうかというものです。
なかなか分かりづらい言葉が多くなってきたので、ここで補足します。

暦年贈与・・・その年1月1日から12月31日の期間で行った贈与。各人暦年ごとに110万円の基礎控除があり、この金額以内であれば贈与税はかからない。
暦年贈与サポート信託・・・110万円という枠に関係なく、毎年一定金額を贈与者から受贈者へ贈与を行う。元本割れや運用収益などは発生しない。
連年贈与・・・毎年一定額を有期間に渡って贈与すること。定期金に関する権利につながる。
定期金給付契約に関する権利・・・後述

 

このお話しで問題になるのは、小見出しに言う連年贈与が、一括贈与と認定されるか否かということです。
例えば、親から子へ1000万円生前贈与を行いたい方がいるとした場合、毎年100万円ずつ、足掛け10年かければ無税で贈与を行うことが可能です。ただし、初めから1000万円を贈与するという予定があったものを、単純に10回払いで分割してるだけ、ということであれば、贈与初年度に1000万円-110万円=890万円が贈与税の課税対象になってしまいます。これが「定期金給付契約に関する権利(有期)」です。要するに元々もらうべき金額(権利)を最初に認識しろ、というものです。

 

課税対象額
1年目 2年目 ・・・ 10年目
暦年贈与 0 0 0
連年贈与 890万 0 0

 

贈与税額
1年目 2年目 ・・・ 10年目
暦年贈与 0 0 0
連年贈与 343.5万 (注) 0 0

(注)直系尊属(両親や祖父母)から20歳以上の直系卑属(子や孫)への贈与の場合・・・258万

えらい違いますね。
自社商品の存続に関わるため、三井住友信託としても看過できない問題だったと思われます。

 

0I9A105515030124meganechira_TP_V

 

◆結論、定期金給付契約に関する権利には該当しない

いろいろあーだこーだ述べましたが、結論としてはそういうことでした。ただし、各年の贈与として正しく認識させるため、毎年双方の合意によった贈与契約書に基づいて、贈与者から受贈者へと渡ることが条件となるようです。贈与者の一方的な意思表示じゃダメなんですね。

国側が定期金に関する権利に該当しない、とはっきり回答したことはかなり大きいです。これまで連年贈与を避けるため、毎年異なる金額を贈与したり、あえて111万円の贈与税の申告書を作成し、1万円足を出させることで贈与の事実を明確にするといった対策を取ることもあったようですが、はっきり言ってこれらも不要だと思います。連年贈与認定は都市伝説どころか、自分の中で99%ない説に変わりました。100%としなかったのは、それでもなお連年贈与に拘るご高齢の調査官の方がたまにいるそうなので。。

 

この信託を通すことで贈与契約書等の作成も行ってくれるため、余計な心配をすることはありませんが、信託を通さずとも以下注意しておけばまず間違いないかと思われます。

・双方合意の贈与契約書を作成する
・上記贈与契約書に公証人役場で確定日付を押印してもらう
・贈与者から受贈者の通帳へ贈与額を振り込む

ただし、相続時精算課税を適用した場合は暦年贈与が使えないほか、贈与後3年以内に相続が発生した場合は生前贈与加算されるといった問題点があるので注意が必要です。
計画的な生前贈与で、より効果的な相続対策を施していきたいですね。
ご質問などはコチラまで⇒お問い合わせ

 

合わせてこちらもご覧ください。
・人気のタワーマンション節税、当局の監視強化へ