◆経営再建のため、一時は本気で中小企業を選択

資本金1億円という大胆な減資を行い、建て直しを模索したシャープ。このニュースが話題となったのは昨年の5月ごろですが、株主だけでなく政府までも含む各方面から猛烈なバッシングを受け、結局1200億超から5億円の減資となりました。ここで※中小企業とは、資本金1億円以下の企業を言うため、結局シャープは中小企業とはならず依然大企業のまま、ということで何ともスッキリしない感じでしたが、そもそも中小企業になることで受ける恩恵とは、どういったものがあるのでしょうか。あらゆる利害関係者を鵜呑みにしてまでも、シャープが受けたかったメリットとは?
※中小企業と中小法人は異なりますが、ここでは説明を割愛し、中小企業とします。

 
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◆代表的なものは4つ!

①欠損金の繰越控除

平成24年度の改正により、資本金1億円超の大企業については、過年度の赤字(欠損金)を翌期以降の黒字(課税所得)に全額充当することができなくなりました(80%が限度)。赤字をタンマリ出してしまったシャープにとって、これはかなり経営再建の足かせになったのではと予想されます。平成28年度(H28.4.1~H29.3.31までに開始する事業年度)は、この限度額が60%になり、平成30年度には50%まで減額されます。安倍政権になってからというもの、法人実効税率の引き下げを声高に宣言していますが、こうした目に見えにくい部分での改正が多くあります。税率が下がっても課税ベースが拡がったため、法人税の税収は逆に増加するんじゃないかと思います。

 

前期 当期 控除 課税所得
大企業 ▲1000 1000 ▲600 400
中小企業 ▲1000 1000 ▲1000

↑イメージ図

中小企業の場合は、翌期以降の黒字に対し、全額欠損金を充当して控除することが可能です。つまり、当期の黒字<欠損金である限り利益に係る法人税等は発生しません。特に浮き沈みの激しい中小企業にとっては、この制度はなくてはならないものです。大企業と同じく、フィルターが入らないことを願うばかりです。

 

②交際費等の損金算入額

平成26年度の改正で、それまで一切損金算入が認められていなかった大企業の交際費等についても、飲食費の50%が損金算入できることとなりましたが、依然として大企業を取り巻く交際費のフィルターは厳しく設定されています。この点、中小企業は年800万円まで損金算入ができ、効果的な節税対策を行うことが可能となっています。

 

③中小企業等に係る軽減税率

大企業は利益に対して、一律に25.5%を乗じて法人税を算出しますが、中小企業は年800万円までの利益について15%の軽減税率を乗じることができます。

 

④少額減価償却資産の損金算入

30万円未満の減価償却資産を取得した場合、その全額を取得時の損金に算入することが可能です。この特例は、③の軽減税率に次いで現在2番目に適用件数が多いものとなっています。

 

その他にも欠損金の繰戻還付、貸倒引当金に係る法定繰入率の適用、外形標準課税・留保金課税の不適用、新品の機械装置等を取得した場合の税額控除など、大企業にはないメリットが多く存在します。
ちなみにあれだけ逆風にさらされていたシャープとは打って変わって、吉本興業はわりとすんなり125億円から1億円の減資を実施、晴れて中小企業となりました。ちゃっかりしてるんだこれが。
日本の企業のうち、99%が中小企業と言われていますが、策略的な適用ではなく、本来受ける権利のある純粋な中小企業について、適用もれのないよう注意していきたいです。

 

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